第66章 無関係な人

「り……離婚!?」

「うわ、マジかよ! っていうか……お前、黒谷優と結婚してたのか!? 隠してたってこと!?」

南坂海乃は表情を崩さない。

「まあ、昔の話。今の私は独身だから」

「独身?」

「南坂海乃。誰の許可を取って、勝手に俺の婚姻状況を宣言してる」

その声が落ちた瞬間、周囲がびくりと固まって、一斉に振り向いた。

薄暗い隅。ひとりの男がゆっくり立ち上がる。黒の手仕立てのスーツ。襟元はわずかに開き、手には琥珀色のウイスキーが揺れていた。

「く……黒谷社長!?」

全員が言葉を失った。――こんな大物が、最初から隅に座っていたなんて、誰も気づいていなかったのだ。

「なんでここに...

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